砺波市に「ものがたり診療所」という場所があります。
終末期医療、在宅医療を患者さんが歩んできた人生の「物語」と共に向き合う・・・高齢化が進む地域の中で、安心、満足して最後を迎えられる環境を支えておられる医療チームです。その診療所をつくり出した佐藤伸彦先生の取材に伺いました。
多くの病院では(一般的にそう言うとよくないのかもしれませんが)患者1人1人の生活や家族形態などを把握するのには時間がかかります。今まで過ごしてきた時間、家族との関係、どんな性格の人なのか・・などなど。「ものがたり診療所」が取り組むのは、誰にでもある背景の「物語」を知り、それを共有することでその人にあった最後に向き合う医療です。
私にとって1番身近な人の死は11年前に亡くなった祖母ですが、忘れられないシーンがあります。
寝たきりになった祖母の介護は自宅ではままならなくなり、所謂、老人病院へ入ることになりました。
病院に入るため、家から車椅子で介護タクシーに乗り込む時。
祖母の顔は明らかに行きたくないと語っていました。もしかしたら「もう家には帰って来られない」とわかっていたのかもしれません。
それから母親は毎日病院に通っていましたが、私はあまり足を運べずにいました。
数ヶ月後に祖母はその病院で息をひきとりましたが、最後の日、呼吸が止まるまでずっとベットの側に居れたことだけが、私の救いです。
「冷たくなってから家に帰ってくる、これでいいのかな・・・」
その時から心のどこかにあった思いがふつふつと甦りました。
家族以外に自分のことをわかって見守ってくれる人がいることは幸せなこと。
それが最後を見届けてくれる方々なら尚のこと、と思います。
しかし、1人1人の願いをかなえるために人の話を丁寧に聞くことは、お互いの理解、そして時間も必要です。
「ものがたり診療所」の物語は「終末期医療とは何なのか」ということはもちろんですが、それ以上に「人との関わり方」を考えさせてくれました。「人に近づくこと」と言ってもいいかもしれません。
ありがたい時間でした。